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この非尋常なアンプが、TAD TL−1601aのドライバーの地位に就いてしまった。(^^;
とりあえず右のように出来上がっている。
スケルトン以外の抵抗の色がススムにしては何となく赤っぽい、のは遂にススムが尽きたので実はニッコームを使ってみたもの。電源は水銀0の現行NEO20本で±15V電源。ケースは2002年6月号のNo−168でも起用されているタカチのOS49−20−33BX。パワーTRの放熱板もフレックスのTF−3205S。だから、非常にコンパクトで軽量。なのはかつての電池式GOAパワーアンプのようなもの。
こういう音がするならニッコームも水銀0も悪くはない・・・と思うのは駄耳のせいか(^^;
が、巨大Rコアトランスで武装した他の完全対称型パワーアンプ達の顔色を失わしむるスピーカードライブ能力を発揮してしまうので、重くてでかくてがさばるRコアトランスを電源に持つ他の完全対称型DCパワーアンプ達は待機状態に甘んじることを余儀なくされてしまった。
実は心臓を鷲掴みされるような底知れぬダイナミックな重低音という観点からすると従来のUHC−MOS等の完対アンプの方が優れるような気はするのだが、それを脚色と感じてしまうぐらいのリアリティを感じさせてくれるのがこいつなのだ。
音空間のかすかな滲みや歪みがスッと整ってリスニング空間の空気を演奏空間に馴染ませる親和能力(ワープ能力)の点で一日以上の長がある、といった感じだ。それはとりもなおさずアンプのスピーカードライブ能力が秀でていることに他ならない。音楽信号通りにスピーカーを動かし、音楽信号以外の動きをスピーカーにさせない、というアンプのスピーカー強制駆動能力がこれだとすれば、こいつはその能力が高い、ということになる。
果たして本当にそうだろうか。単なる勘違いだろうか。(^^;
回路は最終的にこうなった。今後多少の変更があるかもしれないが基本的に変わらないだろう。
当初の回路に比べて電流正帰還側の帰還量調整抵抗を変更し、終段のドライバーを上下ともダーリントンタイプにした経緯はすでに述べたが、電流正帰還側の帰還量調整抵抗をさらに220Ωと500Ωの半固定抵抗に変えている。これはそんなに調整範囲は必要ないと感じたために変更したに過ぎない。前のままでも何ら支障はない。
2段目差動アンプの所の位相補正のSEコン10pFは、このアンプの負帰還量が他の完全対称型パワーアンプに比較して多いことから勘で10pFにしていたのだが、5pFに減らせないかと思って試しに5pFに取り替えてみたところ、その場合は見事に発振してしまうことが分かった。ので10pFに戻した。すると全く安定だ。めずらしく勘は当たっていたわけだ。
結局、電流正帰還アンプが成り立つのは負帰還の掌の中においてだ。正帰還が負帰還の一部を喰うことによって電流正帰還アンプの特異な性質が作られている。破綻を招きにくくする意味もあるが、もともとの負帰還はその分を見込んで多めに確保しておくのが吉だ。
アイドリング電流は、と言うか、これは前段、終段共通電源としてあるので正確ではないが、全体で片チャンネル当たり50mA程度に設定している。もう少し少なくても多くても別に問題はない。アイドリング電流の安定性は良い。例のとおりサーミスタはC960とD217に1個ずつ熱結合している。D217の方に150Ω、C960の方に220Ωがパラ接続だ。
出力は±15V電源で得られる最大8W程度で十分な環境なのでそうしている。もっと出力が欲しい場合は電池を倍にして電源を±30Vにするだけだが、多分アイドリング電流の再調整が必要だろう。
保護回路は今のところ本体側を作っていないのでただのダミーとなっている。
これは、評価版PSpiceが描く例のスピーカー負荷の場合の出力電圧/周波数のシミュレーション。
下は1V入力時の出力電圧値(V)そのもので、上は増幅率(db)だ。それぞれ、上から正帰還量調整抵抗が0Ω、100Ω、200Ω、300Ω、400Ω、500Ωの場合を表している。ま、あのシミュレーションの負荷の場合で増幅率に最大3db程度の差が生じることになる。
こんな変な出力電圧特性のアンプを聴いて良い音だと悦に入っているとは、全く変なやつだ>自分(^^;
出力インピーダンスは例のON−OFF測定法を実践してみると、電流正帰還最大の時に400Hz16Ω負荷で出力電圧4Vの状態で負荷を8Ωに変えると出力電圧が4.7Vになるので(変なやつだが、負の出力インピーダンスとはこういうことだ)、
2*8*(4−4.7)/(2*4.7−4)≒−2.1Ω
となっている。オープンゲインが60db程度と思われるのでその分理論値よりは小さいのだろう。
が、これは実は重大な危険が包含されていることを意味する。
すなわち、負性出力インピーダンスの実際的な意味は、アンプが負荷抵抗が小さい、即ち重い負荷に対して加速度的にパワーを送り込もうとする性質を有しているということなのだ。
分かりやすく言えば、普通8Ωの負荷に対して1Wの出力を出している状態のアンプは、負荷を4Ωに変えると最大で2Wを出力するのだが、負の出力インピーダンスを持つアンプはそれが3Wも4Wも出力しようとするということなのだ。そしてそれは負荷が小さく重くなるほどに顕著になる訳で、通常これではアンプは過大損失で危険に至るだけだ。
なんともアンプ自体が破綻を志向しているとしか言いいようがないではないか。
やはり、こういう爆弾(破綻のメカニズム)をアンプに組み込んでははいけない・・・(^^;
通常の信号入力側が電流正帰還側となっている。とするとスケルトン抵抗が1個余計なような気がするが・・・実はそのとおりで、正帰還量制限抵抗が必要かも、と途中考えたりした名残だ。今はただ付いているだけで使われていない。
さて・・・
果たして夢は醒めるのだろうか?(^^;
(2002.5.20)
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